
日本でよく韓国人観光客を目にするように、日本と韓国は距離が近く手軽にいくことができるため双方旅行先に選ばれることが多い。2023年に韓国を訪れた外国人観光客数が1100万人を超えた。そのなかでも日本が232万人で最も多く、次いで中国(202万人)、米国(109万人)、台湾(96万人)、ベトナム(42万人)であった。
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コロナ前、K-POPの影響で訪日韓国人観光客数は2018年までは増加傾向にあったが、2019年には日韓関係の冷え込みにより減少がみられた。しかしコロナ後の2023年はコスメティックやファッション、食べ物も注目を集め695万8,500人と、全国籍中トップとなっている。コロナ規制の緩和、円安によるショッピング需要、K-POPなどのエンタメ人気、旅行プロモーションとアクセス改善、そして韓国グルメの人気が重なり現在の渡韓数は上昇傾向にあり、SNSにより情報がすぐに拡散される今、ファッションやグルメ、美容施術など最先端を行く韓国は若者に行ける海外として人気を集めていると言える。

コロナ前、2018年までは訪日韓国人の一人当たりインバウンド消費額は横ばいで、2019年は7万6,138円だった。コロナ明けの2023年には、旅行者層の変化に伴い10万7,047円へと増加をみせた。理由は日本で韓国のコスメティックが有名なように、韓国でも日本の安くて高品質なコスメティックが人気を集めているからだと考える。
訪日韓国人の支出において、最も大きな割合を占めたのは宿泊費で、34,765円だった。2番目に大きな割合を占めたのは飲食費で、31,449円だ。弘益大学で実際に調査したところ、日本に行ってしたいこととしてラーメンや寿司、たこ焼きを食べたいという食事に関することをよく耳にした。日本のイメージとして美味しくて質が高い、特に新鮮な食材と繊細な味付けが好まれているようだ。また、衛生管理がしっかりしていて、安心して食事を楽しめるという印象がある。最近では見た目が美しい料理が多く、SNSにアップする文化とも相性が良い。日本の食文化は韓国人から高く評価されているのだ。

訪日韓国人に最も人気のある品目は「菓子類」で、一人あたり平均6,521円分購入されている。購入率順に並べると、「菓子類」を筆頭に、「その他食料品・飲料・たばこ」「酒類」「医薬品」「衣類」の順で続いている。
コンビニエンスストアはプリンなどの美味しいお菓子やスイーツが手軽に手に入り日用品もたくさんあるため人気を集めている。さらに、韓国のK-POPアイドルなどが日本に来た際よく訪れている。そのためアイドルやインフルエンサーが紹介したものが注目を集めコンビニ人気に繋がっているのだろう。
訪日韓国人の55.3%が男性、44.7%が女性だ。また、男性で最も多い年齢層は20~29歳で全体の21.6%を占め、女性で最も多い年齢層は20~29歳で全体の22.8%を占める。韓国で20〜29歳の男性にインタビューしたところ、日本の居酒屋の生ビールや、席でタバコを吸えることで人気だと聞いた。
日韓国人の旅行形態は、全目的の場合と観光・レジャー目的の場合、どちらも個別手配が最多であった。日本と韓国では大きな文化の違いがなかったり手軽に行けるイメージがあるため、パッケージツアーを利用する人が少ないと考える。実際インタビューを行った人でも一人しかパッケージツアーで行った人はいなかった。
訪日韓国人が旅前に情報収集をする際、最も役に立ったのは「個人のブログ(48.7%)」だった。合わせて「SNS(Facebook/Twitter/微信等)(43.5%)」「動画サイト(YouTube/愛奇芸等)(42.8%)」と続いている。また、旅ナカで最も役に立った情報は「交通手段(58.9%)」だ。合わせて「飲食店(55.8%)」「観光施設(33.8%)」と続いている。

韓国人に人気の海外旅行先は、日本、中国、ベトナム、アメリカ、フィリピンと、5つのうち4つがアジア諸国となっている。日本と中国は距離が近いため飛行機代が安いことが人気の理由となっており、日帰り旅行を楽しむ韓国人も存在する。ベトナムやフィリピンは物価が安く庶民にも人気のようだ。コロナ禍から回復したタイミングでも、同じ理由でこれらの国・地域が人気になるものと考えられる。
改善すべき点
インタビューをしていて気になったのは、日本に行った際日本語ができないため英語で話したが英語も伝わらないことが多かったという声だ。調べてみたところ、日本人のTOEICの平均点が561点だったのに対し韓国人の平均点は677点と、かなりの差があった。
私がソウルにきて感じたことは注文形態がキオスクが多いため言語設定で日本語を選択できることの便利さである。日本でもより多く取り入れるべきだと感じた。インタビューをしたところ、日本に行った時に困ることとして多く挙げられたのが交通手段だ。バスの乗り方や電車の乗り方、ICOCAやSuicaなどの交通系ICの買い方がわからなかったという意見が多かった。日本人が韓国に行く際は、WOWPASSやTマネーカードを簡単に駅やコンビニで作ることができるが、日本では外国人専用の券売機がないため苦労したという声がたくさんあった。韓国語対応のウェブサイトや予約システム、観光案内の整備が不十分であると考える。観光地や施設では、韓国語対応のスタッフ配置や、多言語対応の案内板・パンフレットの設置が重要だ。
また韓国ではキャッシュレス決済が一般的であり、日本での現金取引の多さに戸惑う観光客が多いと報告されている。クレジットカードやスマートフォン決済など、多様な支払い方法を導入することで、利便性を向上させることができるだろう。また日本の田舎の風景が人気であるにもかかわらず、田舎には換金所などがなくカード決済ができない場合苦労するためキャッシュレス化を進めていくと良いと思う。
そして、韓国では副菜のおかわりが無料であることが一般的ですが、日本のお通し文化に関する説明が不足しているため、誤解を招くことがある。お通しには料金が発生することや、おかわりができないことを事前に説明するなど、文化の違いを考慮した対応が必要だ。事前に伝えておくことでトラブルの発展にはならないだろう。
さらに鉄道会社が複数存在し、乗り場や料金が異なるため、交通システムが分かりづらいとの声がある。実際観光客の多い難波駅では何本もの地下鉄があるため迷子になっている観光客をよく目にする。韓国語の路線案内や、統一された交通情報の提供を強化することで、観光客の移動をスムーズにすることができる。英語だけでなく色んな言語の案内板やモニターなどを設置することでより快適に旅行できるだろう。
韓国人観光客はSNSやインターネットを活用して情報収集を行う傾向が強いため、無料でwifeを使える場所を増やすことも重要だと思う。韓国では地下鉄に無料で充電できるスポットやカフェ、ご飯屋さんでもコンセントを自由に使うことができるが日本ではほとんどの店ではコンセントを勝手に使ってはいけない。モバイルバッテリーを借りることのできる場所はとても増えているが外国人も借りられる様にしたらいいと思う。
訪日韓国人観光客の増加は、円安による購買意欲の高まりや日本特有の文化・商品に対する関心が背景にある。特に、日本のコスメティック、食文化、エンターテインメントが人気を集めており、若年層を中心にラーメンや寿司などの日本食、質の高いスイーツ、安くて高品質なコスメティックが高く評価されている。また、K-POPアイドルが日本を訪れることがSNSで話題になることも影響しており、日本のコンビニエンスストアや居酒屋文化が注目されている。
一方で、訪日韓国人観光客が直面する課題も多く存在し、特に言語の壁が大きな障害となっており、英語や韓国語対応の案内や情報提供が不足しているため、観光中の不便さが指摘されている。日本語が分からないため英語で会話を試みても、十分に意思疎通ができないケースが多く、韓国語対応のスタッフや案内板の設置が求められる。また、交通手段に関しても、日本の鉄道システムは複数の会社が運営しているため複雑で、乗り換え方法やICカードの利用方法が分かりにくいとの声が多くある。韓国では「Tマネーカード」などの交通系ICカードが簡単に入手できるのに対し、日本では外国人専用の券売機が少なく、使い方が分かりづらいのが課題だ。
さらに、キャッシュレス決済の遅れも不便さを感じる要因となっていて韓国ではキャッシュレス化が進んでおり、スマートフォン決済が一般的だが、日本では現金取引が多く、地方では特にクレジットカードが使えない店舗が多いのが現状だ。このため、キャッシュレス決済の拡充が急務となっている。さらに、韓国では副菜のおかわりが無料であるのに対し、日本のお通し文化に対する理解不足からトラブルになるケースもあるため、文化の違いに配慮した情報提供が必要だ。
これらの課題を解決するためには、以下の施策が有効だと考える。
まず、言語対応の強化だ。韓国語対応の案内板やモニター、ウェブサイト、予約システムの整備を進めることで、観光客が必要な情報をスムーズに取得できるようにする必要がある。また、交通手段の利用を支援するために、外国人専用の券売機の設置や、統一された交通情報の提供を行うことで、複雑な鉄道システムの理解を促進できる。特に、観光地や主要駅には韓国語対応のデジタル案内板を設置し、リアルタイムで情報を提供することが効果的だ。
次に、キャッシュレス決済の普及だ。訪日韓国人観光客の利便性を向上させるために、クレジットカード、スマートフォン決済、さらには韓国で主流の決済アプリへの対応を進めることが重要で、特に地方都市でのキャッシュレス化を推進することで、観光地の魅力を高めることができる。
また、文化の違いを考慮した情報提供も必要だ。日本のお通し文化に対する事前説明を充実させたり、SNSを活用した情報発信、インフルエンサーとの連携を強化することで、韓国人観光客の理解を深めることができる。さらに、SNSを多用する韓国人観光客のために、無料Wi-Fiスポットの拡充や、充電設備の設置を進めることも効果的である。韓国では地下鉄やカフェでの充電設備が充実しているため、日本でも同様のサービスを提供することで、観光客の満足度が向上するだろう。
最後に、プロモーション戦略の見直しが求められる。韓国人観光客はSNSや動画サイトを利用した情報収集を行う傾向が強いため、インフルエンサーとのコラボレーションや、SNSを活用したリアルタイムな情報発信を強化することで、効果的なマーケティングが可能になる。特に、韓国の若年層に向けたプロモーションを強化することで、訪日観光需要のさらなる拡大が期待できる。
さらにLCC(格安航空会社)との提携による割引キャンペーンを実施し、渡航コストを低減させる。特にオフシーズンを利用し、学生などのいつでも旅行に行ける世代の集客を強化するとさらに日韓の旅行が促進するだろう。他にも観光ビザの緩和や免除を検討し、短期旅行のハードルを下げることで、気軽に行き来しやすくすると良いだろう。
日本は季節に応じたイベント(桜祭り、雪まつり、花火大会、正月など)を観光資源として強化することができる。また地域ごとに特色があることも日本の強みだ。各地域ごとにそれぞれが海外に向けてアピールすることで観光業を潤わすことができるだろう。
これらの施策を包括的に実施することで、訪日韓国人観光客の満足度を向上させ、リピーターの獲得につなげることができるだろう。また、観光客の消費意欲を高め、日本の観光業界全体の経済効果を最大化することが可能だ。日韓間の文化交流を促進するためにも、両国の相互理解を深める観光施策を推進することが重要だと考える。 記者:神戸国際大学 古正一華