
今韓国で注目されている現代アート。
現代アートとは、歴史の現代を借りた用語で、美術史における今日、すなわち20世紀後半の第二次世界大戦後の1950年以降から21世紀までの美術を指す。現代アートは奥が深い。絵、もの、建物、写真など幅広い。
現代アートの始まりは、何だったのか。この作品によって、デュシャンは「何が芸術なのか」という芸術の概念そのものに問いを投げかけることになる。デュシャンは目だけで判断するアートではなく、精神に刺さり、思考を生み出すアートを訴えかけた。
これが現代アートの始まりと言われる。現代アートにはさまざまな種類がある。

① コンセプチュアルアート
1960年代後半~1970年代の前衛美術ムーブメント。技術的なことよりも、
背景にあるコンセプト(含意・思想・観念等)を重視するアート。"美的刺激"ではなく"知的刺激"を楽しむもの、ともいえる。

② モダンアート
20世紀に展開された、新たな試み・表現を実践した美術作品を指して「モダンアート」と呼ぶのが一般的。ただ、「近代美術」だけを指す場合や、「現代美術」も含めて考える場合など、その捉え方はさまざまといえる。

③ アクションペインティング
絵具を垂らしたり、飛び散らせたりするような手法によって作品を完成させる美術様式。具体的な対象を描くというより、絵を描く行為(アクション)そのものを重視するのが特徴。

④ ポップアート
映画・コミック・雑誌・広告・報道写真といった大衆社会で大量に出回る素材を取り上げたアート作品。大量生産・消費社会を風刺的に描いたものが多く、1950年代半ば頃、アメリカ大衆文化の影響のもとイギリスで生まれた。

⑤ ミニマルアート
説明的・装飾的要素を可能なかぎり排除しシンプルに表現した美術。1960年代のアメリカで登場し、1970年代にかけて大きなムーブメントを起こした。代表的な作家としては、ドナルドジャッドやフランクステラなどが挙げられる。

⑥ インスタレーションアート
室内や屋外に作品や装置などを設置して、展示空間そのものを作品化する表現手法であるインスタレーション。1970年代以降、既存のジャンルに当てはまらない新しい作品の形態として誕生した表現方法は、作品を空間ごと体験できるのが大きな特徴。
これらが主によく作品化されているジャンルである。次は、どのようにして現代アートが韓国に伝わったのか調べてみる。韓国に現代アートが伝わったきっかけは、20世紀初頭からの西洋文化の影響と、韓国の近代化が大きく関わっている。いくつかの重要な出来事が現代アートの普及に寄与した。
日本による韓国の統治時代、(1910年〜1945年)韓国は日本の文化や教育を受け入れることになった。日本が西洋文化を取り入れていた影響を受け、韓国でも西洋絵画の影響を強く受けた作家が現れるようになった。
1945年の日本の敗戦と韓国の解放後、西洋の美術や思想がさらに流入した。特にアメリカの影響が強くなり、韓国の美術シーンにも現代アートの要素が登場する。
朝鮮戦争後、1950年代〜1960年代はアメリカからの影響が特に強く、アメリカのアートシーン、モダンアート、特に抽象表現主義やポップアートが韓国に紹介された。アメリカの美術学校に留学した韓国人アーティストたちが現代アートの技法や思想を学び、それを韓国に持ち帰ることで、現代アートの普及が進んだ。
1960年代から1970年代にかけて、韓国の現代アートは独自の発展を遂げる。抽象表現主義やポップアートの影響を受けながらも、韓国の伝統文化や歴史を現代的な手法で表現する「韓国的現代アート」の潮流が生まれた。現代では、グローバル化とともに世界中のアートシーンと繋がる機会が増え、韓国の現代アートは国際的に注目されている。特に1990年代以降、韓国のアーティストたちは国際的な美術展に参加し、ソウルを中心に現代アートのギャラリーや美術館が活発に活動を行うようになった。これにより、韓国の現代アートは国際的な舞台で評価され、グローバルなアート市場にも登場するようになった。
要するに、韓国に現代アートが伝わったのは、主に日本統治時代に西洋美術が導入され、その後の朝鮮戦争と経済発展に伴い、アメリカや西洋文化の影響を受けたことがきっかけとなる。その後、独自のスタイルを生み出し、現在では国際的な現代アートシーンの一部として注目を集めている。


若者は現代アートに対してどんな意見を持っているのか。私は実際に弘益大学の美術学生にインタビューを行った。大半の学生は、現代アートに対して好印象だと答えていた。だが、中には苦笑いを浮かべ、現代アートをあまりよく分かっていない学生もいた。学生は、「見た目より、意味が大事」「異世界」「その作品をまだまだ知りたくなる」という意見があった。
ちなみに日本のアートについて尋ねてみると、「韓国は保守的だが、日本は挑戦的だ」「洗練されている」という意見を多く聞いた。弘益大学の敷地内には、美術学生による作品がたくさんあった。作品の制作者と会うことは出来なかったが、見るだけで圧倒されるものだった。最後におすすめの美術館を尋ねると、ソウル国立現代美術館を勧めてもらった。足を運んでみることにした。館内はほとんど写真撮影禁止だったが、いくつか可能なものがあった。作品は、チェ・ビョンフン。まさに現代アートそのものだ。彼の作品は空間と芸術の関係性を強調している。そして、木や金属、石などの自然素材を使用することが多い。素材の持つ特性や質感を最大限に引き出し、その素材が持つ力や美しさを強調している。
この作品は、写真やイラストを用いて、テーマを決め、それにそってメモをするようにデザインされている。
現代アートであって、携帯電話でアニメーションや動画をながすというアートは本当に興味深かった。
この美術館の周りにも現代アートを連想させるような建物が多かった。建物の壁にプロジェクターが埋め込まれていた。3Dのように、映像に映るものがこちらに飛んできそうな工夫がされていて、2時間は眺めることができそう。韓国はIT大国であり、AIアート、メタバース空間を活用したアートが急成長している。また、KPOPや韓国のストリートファッションと連携したアートも増えている。例えば、今韓国でホットなブランド、Ader Error(アーダー・エラー)だ。Ader Errorは、韓国のストリートファッションブランドで、現代アートやポップカルチャーを取り入れたユニークなデザインが特徴だ。このブランドは、アートとファッションを融合させることに非常に積極的であり、特に「美術館のようなデザイン」をファッションに力を入れている。Ader Errorは、芸術的なイラストやテキストアートをTシャツ、パーカー、アクセサリーにプリントし、アートギャラリーの展示を思わせるようなファッションアイテムを制作している。

PUMAやSWAROVSKIなどの人気ブランドとのコラボレーション商品はもちろん、クマのデザインが特徴的なBE@RBRICKとのコラボ商品はとても人気だ。パーカーが29万8000ウォン(約3万円)と、お手ごろとは言えない価格だが、オンラインショップではもう、売り切れである。
このように、韓国ではファッションの中に芸術を取り入れる人が増加し、現代アートがより身近なものになった。
今後、韓国における現代アートは、テクノロジーの発展、社会的な問題、伝統と歴史、そして国際的な交流を通じて多様化し、より影響力のあるものとなっていくと考えられている。アートは単なる美術的表現にとどまらず、社会的なメッセージを発信する手段として、さらなる進化を遂げると予想される。そして、アートがより広範囲な層の人々にアクセスできるようになることで、韓国の現代アートは一層活気づくと思う。
記者:神戸国際大学 中務花音